2009年7月28日
IDC Japanでは、仮想化ソフトウェア市場について分析を行い、その結果を発表した。国内の仮想化ソフトウェア市場は、2007年、2008年と飛躍的な成長を達成し、サーバ仮想化は本格的な普及期に入ったといえる。これからは、仮想環境に対する運用管理ソリューションが仮想化ビジネス拡大のポイントとなるだろう。今回は、IDC Japanアナリストである入谷光浩 氏に、仮想化ソフトウェアの市場動向、導入のメリットと課題、主な製品などについて伺った。
-仮想化ソフトウェアの市場動向について教えてください。
国内の仮想化ソフトウェア市場は、2008年の市場規模は前年比31.6%増の298億円となり、サーバ仮想化は本格的な普及期に入ったと言えます。また、2009年~2013年までの市場規模の予測を行い、2013年には市場規模は734億円に達すると予測しています。
サーバの仮想化技術にはいくつかの種類があり、IDC Japanではそれらを大きく2つのカテゴリに分類しています。1つはバーチャルマシンソフトウェアと呼んでいるもので、簡単に言えば、1つの物理サーバの上に複数の仮想的なサーバを構築し、それぞれ別のOSを稼働させる技術について、それをサポートするソフトウェアのことです。もう1つは、アプリケーション/ユーザーセッションバーチャライゼーションで、サーバでアプリケーションを稼働させ、その画面情報だけをクライアント側へ持ってきて表示させる画面転送型の仮想化技術について、それをサポートするソフトウェアを指しています。
特に成長率が高いのはバーチャルマシンソフトウェア市場で、2008年の市場規模は前年比54.2%増の156億円となり、2013年には498億円を見込んでいます。アプリケーション/ユーザーセッションバーチャライゼーション市場については、2008年の市場規模は対前年比13.2%増の141億円であり、2013年には236億円を見込んでいます。
-サーバの仮想化技術を導入することによるメリットは何ですか?
まず短期的なメリットは、サーバ統合によるイニシャルコストの削減です。例えば、10台必要であったサーバを2台に集約することができれば、単純にハードウェアを購入する費用を削減できるわけです。これは即効性のあるコスト削減で、現在の経済状況の下では一番求められているメリットと言えるでしょう。最初に仮想化技術が出始めた時、仮想化の目的というのはこのサーバ統合でした。しかし、仮想化の本当のメリットは、その後の運用面にあります。サーバ仮想化ソフトウェアの管理機能を活用して運用の効率化を図ることにより、トータルコストを削減していくことが重要となります。
さらに、サーバ仮想化のメリットとして、リソースの有効活用があります。リソースプールと言いますが、CPUやメモリのリソースを溜めておき、それを動的に割り当てることで、仮想サーバの負荷を分散させることが可能になります。そうすることにより、例えば、ワークロードの多い日中に複数の仮想サーバを立てて稼働させ、ワークロードが少ない深夜は不必要な仮想サーバをなくしてしまう、という管理サイクルを自動的に実行させることができるのです。
また、時に仮想化技術は、レガシーアプリケーションの延命として利用されることがあります。例えば、Windows NTなどのOS上で稼働するアプリケーションを利用し続けてきたけれども、ハードウェアが古くなり十分なパフォーマンスを出せなくなってきた、とします。ところが、対応するOSのサポートの有効期間が既に過ぎており、また新しいOS用に移植するのは予算的にも時間的にも。そのような問題を解決するのが仮想化技術です。つまり、新しい仮想化サーバ上にOSとアプリケーションをそのまま移行させることで、これまで同様にアプリケーションを稼働させていくことができるわけです。このように仮想化ソフトウェアを延命措置として利用することもできるのです。
サーバ仮想化ソフトウェアには様々な機能があります。専用のソフトウェアを別途導入することなく、バックアップや簡易的なディザスタリカバリを行うことが可能となりますので、可用性を高めるソリューションとしても有効です。その他にも、開発コストを削減するための活用方法もあります。システム開発を行うときは、開発用サーバを用意する必要がありますが、仮想化によって一台の物理サーバで複数のシステムを動かすことができるため、少ないハードウェアで様々なシステム開発が可能となります。このように、仮想化技術を活用してできることは多くあります。
-サーバ仮想化の導入・運用について、注意しなければならない点はありますか?
サーバ仮想化を導入する際に、注意しなければならないのがリソース管理機能です。仮想ソフトウェアを用いれば、簡単に新しい仮想サーバを構築することができますが、安易に仮想サーバを立ててしまった結果、リソース不足に陥ってしまうことあります。部門ごとに独自にサーバを構築したことによって、いつの間にか全体のリソース不足を招いていたという話をよく聞きます。基本的なことではありますが、仮想化ではまずリソース管理をしっかりと行う必要があります。
次に、サーバの構成情報を確認しておくことが大切です。物理サーバの構成だけを把握していても、仮想化サーバの構成をしっかりと把握しなければ意味がありません。物理環境と仮想環境を含めて、一元的に構成情報を把握していないと、何か障害が起きた時に原因が特定できなくなる可能性があるため注意する必要があります。さらに、仮想化されたサーバのバックアップ機能も当然必要となってくるでしょう。導入時には、バックアップ機能についても併せて考えておかなければなりません。
これらの機能は、仮想化ソフトウェア自体に含まれている場合と、そうでない場合があります。仮想化ソフトウェアの機能も徐々に充実してきてはいますが、それでも不足している機能については、運用管理ソフトウェアを別途導入することで補うことができます。CPUの割り当てなどのリソース管理や、構成情報の管理、バックアップなどの機能を手軽に利用できる運用管理ソフトウェアも多く提供されています。 最近ではサーバベンダから提供されているサーバ管理ソフトウェアに仮想環境を管理する機能が付いており、低価格で手軽に利用できますので、予算によってはそのような製品を見当してみるのもよいでしょう。このように、仮想化ソフトウェアだけでなく、運用管理ソフトウェアと適切に組み合わせて導入することによって、仮想化をもっと有効に活用できるようになるはずです。
-仮想化ソフトウェアの課題について教えてください。
仮想化ソフトウェアの運用で抱えている問題について、ハイパーバイザー型仮想化ソフトウェアを本番環境で使用している企業を対象として、アンケートをとった結果をご紹介したいと思います。その結果は下図のようになります。まず上から2、3番目の項目に、仮想マシン上でのアプリケーションの動作検証並びに動作保証、サポートについての問題があります。実際のところ、仮想化されたサーバ上においては、アプリケーションの動作保証やサポートが対象外となっているケースが多々あります。今後は改善されてくることと思いますが、導入時には注意する必要があるでしょう。
また、回答数が一番多かった項目である「仮想マシン数が増えすぎて管理が複雑になっている」をはじめとして、4番目以降の多くの項目については、前述のように、導入時にその後の運用面について十分考慮していないのが原因であると思われます。仮想化の大きなメリットは運用管理の効率化であるはずなのに、仮想化によってかえって管理が複雑になってしまっては意味がありません。リソース管理、構成情報の把握、バックアップ機能などについて、後々問題が起きないように運用について計画的に考え、必要な機能を事前に揃えてから導入する必要があるでしょう。
-最後に、仮想化を導入したシステム運用を考える中堅中小ユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。
サーバ仮想化というのは、実は非常に簡単に始めることができます。仮想化を実際に試してみようと思うのならば、手元にあるクライアントPCを仮想化してみればよいのです。例えば、無償でダウンロードできるMicrosoftのVirtual PCというソフトウェアがあり、それによって手軽に仮想化を体験することができます。このように、サーバ仮想化は簡単に始められ、そしてスモールスタートが可能であるのが特徴です。導入前に一度体験して、仮想化のメリットを実感するのもよいかと思います。
また、景気の影響で、目に見えるコスト削減が重視される今日において、仮想化ソフトウェアの導入はコスト削減のための即効性のある1つのソリューションだと言えます。しかし、イニシャルコストの削減ばかりが強調される傾向がありますが、本当の仮想化のメリットはその後の運用にあります。サーバ運用の効率化を図ることによって、トータルコストを削減していくことが仮想化のより重要なメリットであると言えます。
仮想化サーバの運用方法は、システムの構築の仕方や、企業ごとの業務内容にも依存します。サーバ統合による目先の削減のことだけではなく、本格的に導入する前に、今後の運用全般についてきちんと見直すことが大切です。多くの場合、仮想化ソフトウェアの機能だけでは十分ではなく、運用管理ソフトウェアの導入を考える必要があります。そのために、実験的にスモールスタートで導入し、リソースや構成などについてあらかじめ検討をつけておくのもよいでしょう。
特集「今だからこそ考える、「仮想化」導入による賢いシステム運用」
| 第1回 | 経費ダウン、効率アップ!知ってるだけで差が出る仮想化ソフトウェア |
| 第2回 | コレで解決、仮想化ソリューションセレクション! |











