2009年4月21日
世界的な景気後退は、日本経済にも深刻な影響を与えている。それに伴って、国内のIT投資も大幅な減速を余儀なくされている状態である。そのような経済状況の中、多くのIT投資が鈍化する一方で、売上拡大のための戦略的IT投資が堅調に推移しているのが注目される。 今回は、IDC Japan のITスペンディングのリサーチアナリストである市村 仁氏に、国内中堅中小企業のIT市場におけるIT投資動向と今後の予測について伺った。
-中堅中小企業と大手企業について、IT投資成長率と今後の推移について教えてください?
2009年のIT市場の市場規模は、中堅中小企業(SMB:IDCでは従業員規模999人以下と定義)では3兆7千億円で前年比の成長率が-2.4%、大企業では6兆5千億円で成長率は-1.4%になると予測しています。
IT市場の成長率の推移につきましては、次のグラフをご覧頂きたいと思います。成長率はこれまでSMBの方が高く推移していたのですが、昨今の景気の影響をSMBの方がより強く受けていることにより、2008年から逆転しています。今後2011年ばまで、この傾向は続いていくと考えています。また、2010年上半期にかけて経済状態が回復へ向かうという前提で考え、2010年の半ば頃に大企業の成長率がSMBに先駆けてプラスに転じると予測しています。SMBはそれに遅れて2011年位から、本格的に回復に向かいはじめ、2012年以降から前年比成長率2~3%増で堅調に推移していく基調が戻ってくるものと思われます
大企業に関しては、本来は2009~2010年にサーバなどのハードウェアのリプレース時期にあたるのですが、経済状況の悪化によってそれがやや先送りにされ、2010年はその反動で成長率が上がっていくものと考えられます。しかし2011年以降はその要因もなくなり、落ち着いていくと思われます。SMBは、同様なリプレースサイクルの他に、2008~2009年に本来投資するべきであったeコマースやコンプライアンス関連が先延ばしになり、2011年頃からようやく着手することができるようになると思われます。それにより、2011年以降も比較的高い伸びは維持すると見ています。
-中堅中小企業の分野別の投資動向はどのようになりますか?
IDCでは、IT投資の分野をハードウェア、ソフトウェア、ITサービスに分類しています。2009年における分野別の市場規模はハードウェアが1兆1千億円、ソフトウェアが8千8百億円、ITサービスが1兆7千億円で、前年比の成長率はハードウェアが-10.9%、ソフトウェアは3.5%増、ITサービスが1.1%増と予想しています。
ハードウェアへの投資は、従来より価格下落の影響により縮小傾向でしたが、景気動向の影響を最もうけ、PCを中心に大きく縮小してくるものと思われます。ソフトウェアはセキュリティソフトなどを中心に堅調な成長を見込んでいます。ITサービスもアウトソーシング分野では堅調な成長が見込まれますが、システムインテグレーション分野を中心に減速すると予測しています。
-中堅中小企業の今後のIT投資動向について?
中堅中小企業(SMB)のIT投資動向などを調査する目的で、IDCでは2009年2月にユーザ調査*を行っています。そのユーザ調査の1つとして、「経営の課題」について質問を行った結果が次の図になります
現状の景気が後退している状況であれば、費用削減に関連した項目が上位を占めてもよさそうなものですが、実際はそれらの項目を押しのけるように、「売上拡大」、「新顧客の獲得」、「営業力、チャネルの強化」などの戦略的な項目の回答率が高くなっているのがわかります。
2008年の段階ですでに原油/原材料価格高騰、円高などによって経済状況は厳しくなっていましたので、SMBではコストカットを十分に行ってきており、これ以上コスト削減しても改善が見込めない状態になっている、または企業規模が小さいためにコスト削減の余地が小さいことがと考えられます。現状打開のために、次に行うべきことは「売上を拡大すること」であり、そのための戦略的な投資に関する需要が伸びていると予想されます。
また、ユーザ調査として、この他に「ITによって効果が期待できるものは?」という質問に対し、1位は「業務プロセスの改善」、次に「情報共有化」、「売上拡大」という結果となりました。これら上位の項目は、特にSMBで高い回答率になっており、この結果からもSMBは戦略的な投資に関心があることがわかります。
*SMBの回答数は1,122社。比較のため大企業278社も調査対象としている。










