2008年1月13日
携帯情報端末としての多彩な機能を持つスマートフォン(コンバージドデバイス)。少しずつその認知度も高まり、今後の様々なビジネスシーンにおいて活用されることが期待される。導入に際しては、どうしてもコストばかりが注目されがちであるが、同時にスマートフォンの本来のメリットを有効活用するためには、長期的な視点で費用対効果を考えていく必要がある。IDC Japanのコミュニケーションズシニアマーケットアナリスト 木村融人氏にスマートフォンの市場動向、メリット、今後のトレンドなどについて伺った。
-スマートフォン(コンバージドデバイス)とはどのようなものですか?
私どもIDCでは、スマートフォンという名称は用いずに、コンバージドデバイス(融合デバイス)というより大きなカテゴリに含めてスマートフォンを扱っています。コンバージドデバイスとは、通信事業者を通して音声通話機能を提供していることと、Windows、Linuxなどの汎用性のあるOSを搭載している携帯情報端末を指しています。
正確にはブラウザ機能があることや3G(第3世代の通話方式)であることもその条件に入りますが、汎用OSではブラウザは標準搭載されていますし、日本の携帯端末は基本的に3Gが採用されていますので、先ほどの2点がコンバージドデバイスの定義と考えていただいてよいと思います。またIDCでは、ワールドワイドなカテゴリ分けを考えている関係で、PHSは別のカテゴリに分類しています。
-現在の市場動向について教えてください?
携帯電話の売上も低迷し、2~3割ほど落ち込んでいる今日の景気動向の下では、2007年までプラス成長が続いていたコンバージドデバイスの市場も、2008年では出荷台数ベースで20%程度のマイナス成長となっているのが現状です。去年より採用の進んだ割賦販売方式が、法人にあまり好まれない傾向にあるのも、法人の需要が伸び悩んでいる原因の1つであると言えます。
しかし同時に、2008年はiPhoneやHTC製品など機種のバリーエーションも増え、コンバージドデバイスの認知度が高まってきた年でもあります。中堅中小企業においても、コンバージドデバイスを採用しようという動きが高まってきました。このように2008年は、コンバージドデバイス市場にはマイナスの側面とプラスの側面があると評価できます。今後の市場の動向に注目したいところです。
-スマートフォン(コンバージドデバイス)のメリット・デメリットは何ですか?
コンバージドデバイスのメリットは、社外で会社のメールアドレス宛てのメールを確認し返信でき、基幹システムとの連動が行えることなどによって、業務の効率化が図れることです。中でも一番のメリットは対応の迅速化でしょう。オフィスの内と外とが迅速につながり素早い対応が可能になりますので、特に顧客満足度の向上やトラブル対応などの目的には有効なツールであると言えます。
また、今後3.9G(3Gを発展させた次世代の携帯端末の規格)によって100Mbpsという通信速度が実現されれば、情報通信の利便性は大きく広がってくると思われます。通信の高速化という要素が加わることで、より詳細な情報のやりとりが可能になり、もう1ランク上のメリットを得ることができます。将来的にホーム・オフィスなどでの通信環境をコンバージドデバイスで担わせるなど、先を見越した活用方法を考えることもできるでしょう。
デメリットはやはりコスト面になります。PDAやコンバージドデバイスを有効活用するためには、モバイルシステムを導入することが望まれますが、システムの構築にはそれなりのコストが必要になります。また、システム構築に期間がかかり過ぎれば時間的なロスが大きくなり、導入の阻害要因になり兼ねません。システムのオープン化、パッケージ化などによってシステム設計、構築を効率化することで、導入までの期間を短縮し、コストダウンを図っていくことが、今後のコンバージドデバイスの普及のための1つの鍵となるでしょう。
-注目される技術トレンドについて教えてください?
技術面で特に注目されるのは、セキュリティについてです。海外でBlackBerryが好評であった理由の1つは、ユーザ管理やセキュリティが充実していることで、そのためにペンタゴンでも採用されるようになりました。日本でセキュリティといえば、端末を紛失したときの対策からスタートすることが多いですが、海外では端末を持つ人を限定し、適切なユーザ管理を行うことも重視されます。
また、メールサーバの整備や、基幹システムとのデータ連携により、情報が一元管理されていることも重要です。これからは社外であっても、オフィスでPCを利用しているのと同等のレベルでデータ連携が行われることが、要求されるようになってくるでしょう。このような情報の一元管理とセキュリティはセットで考えられ、いずれも必要とされる要件は決まっていますから、ウイルス対策なども含め、全体を通してどれだけ総合的に機能が整備されているかということが問われると思います。
-プレーヤー(事業者)について教えてください?
コンバージドデバイスについても、やはり携帯電話と同様な事業者がシェアの上位に入ってきます。現状ではまだ、事業者ごとにそれほど顕著な戦略の差やメリットの違いがあるとは思われませんが、例えばKDDIでは、既存の固定電話サービスと融合させたデータ管理のサービスなど、インフラの整備に注力した提案を行っているのが特長です。
NTTドコモは、比較的規模の大きい企業を対象として、システム導入を進めるアプローチを行い、どちらかと言えばシステムの質を重視した提案を行っています。今後は関連グループをいかにまとめていくかが鍵になってくるでしょう。それに対して、ソフトバンクは無料で端末を配布し、月額980円でサービス提供するという料金戦略を行っています。コスト面で考えれば、中小企業でも導入しやすいサービスであると言えます。
ウィルコムは既存のPHSユーザに対して、次世代におけるサービスのメリットをいかに提示できるかということが、今後のユーザ維持、拡大に大きく関わってくると思われます。イーモバイルは、サービスを提供し始めて間もないこともあり、これからのサービス展開に注目したいところです。
最後に、スマートフォンの導入を考えるユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。
業務の効率化、顧客サービスの向上という側面を考えれば、たとえ少人数での利用であっても、モバイルシステムの効果的な活用方法は確実にあると思います。料金が最優先だという考え方が大半だと思いますし、そうせざるを得ないこともありますが、将来のメリットを考慮すれば、ただ単に料金体系だけでモバイル製品を評価するのは、あまり賢い考え方ではないと思います。
モバイルシステムを導入することの優位性を考え、次世代の技術や、これからのホーム・オフィスが広がってくる時代を見据えて、他よりも一歩先に手を打つことのメリットを見極めることも必要でしょう。特に、仕事の質を追いかける中小企業では、他社との差別化を図る上でも、コンバージドデバイスの活用方法は色々と考えられると思いますので、是非一度ご検討ください。
特集「スマートフォン元年が来た!」
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