Bizma!の歩き方



トップページ > 特集「業務効率UP術!リッチクライアントの活用」

特集

業務効率UP術!リッチクライアントの活用 第1回:振返る、リッチクライアント進化論

2008年12月2日

レガシーシステムに比べ、ユーザビリティの面で課題の残るHTMLクライアントに代り、高い表現力と操作性を実現するリッチクライアント。その認知度も高まり、本来の開発環境が整った今日、リッチクライアントは新たな普及期を迎えつつある。今回は、野村総合研究所の田中達雄氏にリッチクライアントのメリット、市場動向、ベンダの特長などについて伺った。

-リッチクライアントとはどのようなものですか?株式会社野村総合研究所 情報技術本部 技術調査部 上級研究員 田中 達雄 氏

これまで、開発コストの削減や保守・運用性の向上のために、メインフレームやクライアント/サーバシステムから、Webシステムへの移行が進められてきました。しかし、HTMLクライアントではこれらのメリットを得られる半面、ユーザビリティが犠牲となり、生産性の低下を招く場面がありました。そこで、注目されたのがリッチクライアントです。リッチクライアントは、ユーザビリティの優れたWebシステムを開発する技術として登場した技術です。

リッチクライアントの特長は、「ユーザビリティの高いユーザインタフェースを容易に実現できること」と「プログラム配布の容易性」です。以前は、Webブラウザに依存しない実行環境を持っているということも、リッチクライアントの特長として挙げていましたが、今日のAjaxの普及に伴い、その定義も見直しが必要となってきました。

ユーザビリティの高いユーザインタフェースを実現する機能の1つに通信機能があります。HTMLクライアントでは、1つの操作ごとにサーバ側で画面が生成されてクライアントに送られるわけですが、そのプロセスを省くことで操作性を高めているのがリッチクライアントです。通信機能を使ってサーバ側から更新データのみをクライアントへ送り、クライアント側の機能で画面に表示させますので、サーバの負荷を軽減し、クライアントのリソースを有効活用して高い操作性と表現力を実現することができます。

-リッチクライアントのメリットとは何でしょうか?

「表現力」、「操作性」、「運用性」の高いアプリケーションの開発が容易になることが、リッチクライアントの大きなメリットといえます。操作性の面では、例えばHTMLクライアントでは簡単には実現できなかった、ファンクションキーの割り当て、タブによる移動、ドラック&ドロップ、入力エラーチェックなどの機能を簡単に実現できるリッチクライアント製品が多く提供されています。

表現力という意味では、例えばGoogleマップなどを思い浮かべるとわかりやすいと思いますが、直感的なユーザビリティを実現する高度な表現力を可能にします。クライアント/サーバシステムのようにマニュアルを必要とせずとも、見ただけで直感的にその操作方法がわかることが、業務アプリケーションには今後一層求められると思われますが、リッチクライアントでは、そのような表現力をより高度なレベルで実現することが可能になります。

また、プログラム配布が容易であることが、導入および運用を効率化し、その運用性を高めています。それはまた、保守の容易性にもつながることになります。

図1:リッチクライアントのメリット 図1:リッチクライアントのメリット

-リッチクライアント市場の変遷について教えてください。

最初の普及時期は2004~2005年のことで、この頃は啓蒙を行っていた時期でした。まだリッチクライアントについてほとんど知られておらず、その定義も曖昧であったといえます。2006年になると、ある程度リッチクライアントについての認知度も高まり、日本のユーザ企業でも導入が進みました。しかしそれは、導入が進んだ時期であると同時に、リッチクライアントの課題が浮き彫りになった時期でもありました。私どもはその時期を、第二普及時期と捉えています。

なぜその時に、リッチクライアントの課題が析出してきたかといえば、それまでに開発されたアプリケーションは、クライアント/サーバシステム、ないしはメインフレームのダム端末を、単にWeb化しようという発想から生まれたツールが多く、厳密な意味でリッチクライアントを動作させるために作られたツールではなかったからです。そのため、豊かな表現力を実現するための開発環境が整っていなかったり、クライアントとサーバの差分だけを更新してデータの同期をとる仕組みも確立されていなかったりしたことが原因でした。

現在、第三普及時期に入り、これまでの課題を解決した真のリッチクライアント製品が生まれるようになってきました。その意味では、息の長い普及期間に入ったといえます。また、次世代のHTML規格であるHTML5の仕様が既に公表され、2010年には正式に勧告されることになります。既に先行してHTML5をサポートするブラウザも出てきていますが、今後HTML5が普及すれば、現状のリッチクライアントで実現されていた一部の機能もHTMLで実現できるようになります。

また、これまでWebサイトの閲覧ツールであったWebブラウザがWebアプリケーションのプラットフォームに変貌する動きも出てきました。Google Chrome、Firefox3.1などがその代表例です。そうなると、現在のリッチクライアントとHTMLの関係も変わってくることが予想され、そこで1つ大きな転換期を迎えることになるでしょう。そこまでの期間を、第三普及期と考えています。

図2:普及が進むリッチクライアントの変遷 図2:普及が進むリッチクライアントの変遷

-リッチクライアントの市場動向について教えてください。

例えば、RIAコンソーシアムでは、RIA(リッチインターネットアプリケーション)に関する様々な調査を行っています。まず、RIAの認知度に関する調査では、RIAについて「知っている」もしくは「聞いた事がある」と回答した人の割合を集計すると2008年2月の結果が32.8%で、過去2回の結果と比べて4%の増加となっています。システム関係者に限定すれば約7割となり、認知度の高まりがうかがえます。

RIAの導入状況に関する調査では、システム関係者に限定すると20%が既に導入しており、導入に関心を持っている人(導入予定、検討中、関心がある)の合計は全体の約40%となっています。また、業務アプリケーションのデザインに関する調査では、その必要性を感じている人は80%以上にも上り、さらにデザインの最も重要な要素として「操作性」を挙げる人が60%以上を占めていました。つまり、デザインによって、操作性の向上が図られることがユーザに期待されているといえます。

図3:リッチクライアントの導入状況
出典:RIAコンソーシアム(2008)
図3:リッチクライアントの導入状況

-リッチクライアントの主なベンダの特長について教えてください。

主なベンダとしては、マイクロソフト、アドビシステムズ、アクシスソフト、カール、日本ネクサウェブなどが挙げられます。マイクロソフトはVisual Studioを使った社内向け業務アプリケーションの開発者が多いことから、企業ユーザに対して優位に位置しています。ただし、Silverlightの普及率が低い(マイクロソフトによれば約25%の普及率)ことなどから、コンシューマ向けには苦戦している状態です。

アドビシステムズは、リッチなコンポーネントやデザインを作る環境に優れていること、そしてFlashの普及率が高い(アドビによれば95%以上の普及率)ことが大きな強みであり、特にコンシューマ向けに優位にあるといえます。また、携帯端末でのFlashのサポート及びインテルとの提携(Flashの最適化など)も、その優位性を後押ししています。マイクロソフトは業務アプリケーションエンジニアを、アドビシステムズはクリエーターを、多く抱えているという構図があります。

アクシスソフトの提供する「Biz/Browser」は、高い操作性を実現すると共に、高速な画面表示レスポンスと高いセキュリティが特長です。カール「Curl」は、サーバ製品との連携性が高く、資産の有効活用が可能であることがメリットであり、完全なオブジェクト指向である言語は、開発者に好まれる傾向にあります。日本ネクサウェブの提供する「Nexaweb」は、リアルタイムデータ配信や高ハイパフォーマンスが要求されるシステムの構築を可能とし、また洗練されたユーザーインターフェースも特長といえます。

図4:リッチクライアントベンダの特徴 図4:リッチクライアントベンダの特徴

最後に、リッチクライアントの導入を考えるユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。

リッチクライアント導入を検討するケースとして多いのは、クライアント/サーバのライセンスやサポートの終了を機に業務システムをWeb化したいが、操作性は落としたくないというような場合です。このとき、単にクライアント/サーバのユーザインタフェースをそのまま置き換えるだけでなく、本来は投資対効果を考慮して、さらに操作性や見える化を促進し、表現力をアップさせるような要素を加えていきたいところです。しかし、予算を考えて単に既存のユーザインタフェースをを置き換えるだけのリッチクライアント導入も見受けられます。どちらを選択するかは、大きな意思決定となるでしょう。

また、既にお話ししましたように、2010年にHTML5が勧告となります。今後、リッチクライアント製品の導入を検討する際には、将来的にHTML5で実現可能となる機能を見据えた検討も必要となるでしょう。それからもう1つ、ソフトウェア業界全体にオープンソース化の流れがありますので、オープンソース化の面でコミットしているベンダであるかどうかということも、リッチクライアント製品選択の一つの判断基準となるでしょう。

システム移行などの際には、以上のようなことを考慮して、リッチクライアントの導入をご検討いただければと思います。

特集「業務効率UP術!リッチクライアントの活用」

第1回 振返る、リッチクライアント進化論
第2回 快適なリッチクライアントソリューションはコレだ!

[業務効率UP術!リッチクライアントの活用関連ページ]

IT製品更新情報


ページの先頭へAr02