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中堅中小企業で導入が進むIP電話ソリューション 第1回:コストメリットよりも“新しいことができる”メリット

2008年11月11日

今日においては、IP電話サービスは多くの企業での導入が検討されている。IP電話といえば、そのコストメリットが強調されがちであるが、ナレッジマネジメントなどその付加価値を含めてより広い視点で、電話を選択しなければならない時代となってきた。今回は、野村総合研究所の坂上氏、阿波村氏に、IP電話の市場動向、導入メリット、選定のポイントについて伺った。

-IP電話(固定IP電話機、ソフトフォン、無線IP電話機)とは?株式会社野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 担当部長 坂上 充彦 氏 / 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント 阿波村 聡 氏

定まった定義があるわけではありませんが、まず(固定)IP電話とは、簡単に言えば、一般の電話回線ではなく、インターネット回線を利用した電話サービスのことをいいます。IP電話のネットワークは、VoIPという音声をIPパケットに変換する技術を用いて構築されています。電話回線と違って、1回線を複数のユーザによって共有できるため、回線を効率よく使用できるメリットがあります。無線IP電話は、このVoIPを無線LANによって実現し、携帯型の電話端末を用いて通話するシステムで、携帯電話機と兼用できる端末もあります。

ソフトフォンは電話機を利用するのではなく、パソコンにインストールされたアプリケーションによって通話するシステムです。Skypeのように電話機ではなく、パソコンにヘッドセットマイクなどを接続して使用します。

図1:3つの形態があるIP電話ソリューション 図1:3つの形態があるIP電話ソリューション

-IP電話の市場について教えてください。

一時期のように、IP電話の導入が大きく伸びる時期は過ぎ、成熟期を迎えつつあります。大企業、中堅企業を中心に、はっきりとした需要のあるところには一通り導入が進み、現在は何らかの理由で導入を踏みとどまっている企業が、徐々に入れ替えを行っている状態です。全般的に考えると、現在の企業における実質的な成長率は、高くても1割程度と考えてよいでしょう。中小企業も少しずつ導入を進めているところで、中小企業に関しては、今後の成長率は期待できると思います。無線IP電話は商品がまだ少ない状態で、回線数は固定に比べれば圧倒的に少ない状態です。これから伸びていくものと考えるべきでしょう。

-IP電話のメリットは何ですか?

IP電話といえば、まず多くの人がそのコストメリットを考えるでしょう。特に拠点数が多い企業、特定の拠点との通話が多い企業、海外との通話が多い企業などではコストメリットを受けやすいといえます。また、特に通話が多い取引先があるときには、その取引先と一緒に契約することでコストダウンを図ることも可能です。

しかし、レガシーの電話でも料金体系が見直されている今日、IP電話でも使い方によってあまりコストダウンにつながらないこともあり、条件次第ではIP電話のコストメリットは薄まりつつあります。また、留意するべきこととして、IP電話は旧来の電話のPBXとは異なり、自社運用の場合は数年でメンテナンスを行わなければならないということがあり、レガシーの電話機になかったコストがかる可能性もあるので、注意が必要です。これからはコスト面ばかりではなく、IP電話の付加価値に目を向けて、より広い視点でメリット、デメリットを考えていくべきだと思います。

IP電話の付加価値として挙げられるのは、例えばユニファイドコミュニケーションと呼ばれる多様なコミュニケーションサービスの提供です。担当が不在の場合の転送機能や、不在通知を自動的に残せる機能など、コミュニケーションを効率化する機能などがあります。スマートフォンは、特にアプリケーションと連携させやすいツールですので、そのようなユニファイドコミュニケーション機能を利用しやすいといえます。所在を確認したり、チャットやビデオ会議を行ったりすることも可能になってきます。

カスタマーセンターなど、フロントオフィスでの活用まで考えれば、ガイダンスによる問い合わせの振り分けや、海外のセンターへの転送など、効率化やコストダウンにIP電話はとても有効だといえます。顧客とのやりとりを記録したり、また同時にソフトフォンによって、マネージャにリアルタイムで対応を相談するなどの利用法もあります。IP電話+ソフトフォンで、センターの高機能化、高効率化を図ることも可能になります。

このようなメリットが考えられますが、例えば日報や営業ノウハウを共有するシステムと連動させることで、ナレッジネジメントの視点も取り入れることができます。無線IP電話については、NTTドコモなど携帯電話事業者などが無線LANと携帯の両方のサービスを提供しはじめており、これから普及してくるものと思われます。ただ、無線IP電話と携帯電話の両方が全社的に必要であるというケースは少ないでしょうから、営業部署だけ利用するなど、部署単位での導入を検討するとよいでしょう。

図2:コストメリットよりも“新しいことができる”メリット 図2:コストメリットよりも“新しいことができる”メリット

-どのような企業がIP電話を導入する傾向が強いですか?

IP電話の導入には、企業規模や業種にはあまり関係なく、その企業の志向に依存することが多いと思われます。確かに企業規模によるメリットはありますが、IP電話にも色々な料金体系がでており、スケールメリットはそこで吸収できることが多く、柔軟に選べるサービスになってきています。現状ではまだ大手の方がIP化の比率は多いですが、次第にその裾野は広がってきています。

特にユニファイドコミュニケーションやナレッジマネジメントに関しては、社風が影響するケースが多く、例えば先進的な風土を持ったIT企業などがよく導入する傾向があります。特に中小企業などでは経営者のマインドによるところが強く、ナレッジマネジメントなどを考慮し、将来を見据えて広い視点で考えるようなところが導入しているように思われます。

-IP電話の主なプレーヤとその特長について教えてください。

IP電話の主なベンダとしては、例えば、NEC、富士通、沖電気工業、シスコシステムズ、日本アバイア、フォーバルなどが挙げられます。
NECはUNIVERGEというサービスの中で、ブロードバンド・モバイル環境を含めた先進的なソリューションを展開しています。無線IP電話と携帯との連携は色々な事業者が手掛けており、これからも注力されていくところだと思いますが、NECはその中でも昔から行っているイメージがあります。
富士通、沖電気工業はベーシックなサービスを堅実に行っています。富士通は無線LANを利用できるWindowsモバイルを積んだ携帯なども提供し、また沖電気工業ではPDAとの連携も模索しています。
シスコシステムズ、日本アバイアといった外資系は、比較的規模の大きな企業をターゲットとしています。シスコシステムズは音声通話やデータ通信を融合させたトータルソリューションを特長とし、また日本アバイアについては、音声認識で接続・転送を行うような音声ソリューションや、ヴォイスメールなどを含めた一括管理などが注目されます。

図3:国内。外資系IP電話ベンダ 図3:国内。外資系IP電話ベンダ

-最後に、IP電話の導入を考える中堅中小のユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。

電話は業務に大きく影響するインフラですから、当然シームレスに稼動していることが重要です。導入の際には、端末とキャリアを別々に考えるのではなく、いざというときにキャリアと連携した保守体制があるかどうかを考慮するべきでしょう。やはり、どうしてもIP電話は、電話回線に比べて安定性の問題がありますので、ワンストップで保守を行ってもらえることが大切になってきます。

また、電話はコスト削減の対象になりうることには間違いないですが、それは使い方によってだいぶ異なることに注意する必要がありますし、ナレッジマネジメントなども含めて大きな視点で導入を考えていただきたいです。総務部門とシステム開発部門との連携が難しいこともあると思いますが、これからは付加価値を活用する可能性も考え、電話導入の担当を総務部だけではなく、システム部門も含めて考えていくことをお勧めします。それによりコストだけではなく、色々と建設的な議論もできるのではないかと思います。コミニュケーションツールは業務の流れを変える力を持ったものですから、これを機会によく検討していただければと思います。

特集「中堅中小企業で導入が進むIP電話ソリューション」

第1回 コストメリットよりも“新しいことができる”メリット
第2回 機能で選ぶ、IP電話ソリューション

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