2008年9月16日
調査会社のミック経済研究所では、情報セキュリティ市場のそれぞれの分野について、ベンダの提供形態ごとに、「アプライアンス」、「ソフトウェアパッケージ」、「サービス(ASP、SaaS)」に分類している。中でも、セキュリティアプライアンスサーバは、その使い勝手の良さや運用の簡便さから、中堅中小企業を中心に導入が進んでおり、市場は拡大傾向にある。
今回は、セキュリティアプライアンスの特に「アンチウィルス」と「アンチスパムメール」について、同研究所の河村昌司氏に、その市場動向および各ベンダの戦略などについて伺った。
- アプライアンス製品のメリットと市場動向について教えてください。
セキュリティアプライアンスとは、インターネット上に仮想的な専用ネットワークを構築するインターネットVPNをベースとしたアプライアンス製品を指します。アプライアンス製品は、その導入のしやすさ、管理のしやすさが大きなメリットであり、低料金で何十クライアント分の管理を1台でこなせることから、高いニーズを示しています。
今日のセキュリティ業界では、統合管理という言葉が1つのキーワードとなっています。ソフトウェアであれば、例えば5つの機能を利用するためには、5種類のソフトウェアを導入する必要がありますが、アプライアンスであれば1つの製品に複数の機能がひとまとまりとなっているため、一元管理ができるという特長があります。さらに、アプライアンスによって一元管理することで、グリーンIT、消費電力の削減などといった、環境問題に関連したメリットが謳われることも多くなってきました。
アンチウィルス、アンチスパムメールなどの機能をはじめとする「外部攻撃防御型」の情報セキュリティソリューションについて、提供形態別(アプライアンス、ソフトウェアパッケージ、サービス)の市場規模の推移に関する調査結果をみると、2007年度ではアプライアンスが全体の約6割を占めています。続いて、ソフトウェアが4割弱を占め、残りがサービス(ASP、SaaSによって提供)になります。市場全体の規模は同年度において1千億円強で、その中でアプライアンスの市場規模は620億円に達します。2008年度では、アプライアンスが7割を超えると予測しています。
※この調査はセキュリティベンダを調査対象としたもので、サービスプロバイダ経由でのセキュリティ対策などの市場は除いています。また、アプライアンスの中には、UTMやIPsec-VPNアプライアンス、ファイアウォール/VPNルータなども含みます。
導入・管理がしやすいという面では、ASP、SaaSなどのサービスも、SEの不足気味な中堅中小企業に適していますが、まだ市場としては立ち上がったばかりであり、これから伸びていく市場だと思われます。ただ、ASP、SaaSの形態では、どうしても汎用的なサービスとなりますので、機能的には必要最低限になります。より高い機能を求める場合には、アプライアンス製品をカスタマイズして利用することを考えた方がよいでしょう。さらに専門性を持たせてセキュリティ対策を考えていく場合には、ソフトウェアを用いて自社で管理していく必要があります。
また、導入が進んでいる業界としては、アンチウィルス市場では、「製造業」、「公共・学校」、「金融業」、「サービス業」の順で多くなっています。アンチスパムメール市場では、「製造業」、「通信業」、「サービス業」の順で多くなっています。
- 「アンチウィルス」の市場について教えてください。
アンチウィルスは、ウィルスの検知から駆除までを行い、ウィルス感染前の状態へ回復させるツールです。
アンチウィルの市場では、ソフトウェアとして提供されることが圧倒的に多く、提供形態別の出荷金額でみればソフトウェアは300億円以上になり、全体の8割以上を占めています。アプライアンス型とASP・SaaS型での提供は1割弱程度になります。
- 「アンチスパムメール」の市場について教えてください。
アンチスパムメールのベンダは非常に多く、業界内でも珍しいほどベンダがひしめきあい、しかも年々増えています。
アンチスパムメールにおける提供形態別の市場シェアをみると、アンチウィルスとは逆に、アプライアンスが圧倒的に多く9割近くを占めています。アンチスパムメール機能の導入は、ユーザが自社にメールサーバを持っていることが前提になります。しかし、中堅中小企業が自社でメールサーバを持っていることは少ないため、どうしても大手企業の導入が中心になります。
アンチスパムメールのアプライアンス市場の伸び率は1.5倍近くあり、市場規模は2008年には90億円近くになるものと思われます。ただ、伸び率は高いのですが、ベンダの意見を総合すると、市場もそろそろ落ち着いてきたといいます。導入すべき大手ユーザは既に導入し、あとはマイグレーションのニーズをいかに獲得していくか、あるいは中堅中小企業向けの製品を展開するかということになります。
-セキュリティアプライアンス製品について、各ベンダの中小企業向けの戦略について教えてください。
他の製品と同様に、最初から中堅中小企業向けに製品展開を行っているベンダも多くあります。機能面では、どの製品も遜色がなくなってきていますから、「購入して電源を入れるだけでその日からすぐに使える」、「煩雑なメンテナンスを必要としない」などといった、アプライアンスのメリットを積極的に訴えて、SMBを囲い込んでいくことが重要になります。使い勝手の良さもポイントとなるでしょう。
また、セキュリティ製品は、売って終わりという製品ではなく、常に定義更新やバージョンアップなどが必要となります。その点アプライアンスでは、1回の操作で何十ユーザ分の対応ができるのも便利です。最近の傾向として、セキュリティ機能をソフトウェアとして提供していたベンダが、中堅中小企業向けに使い勝手のよいアプライアンスとして提供するようなケースも増えているようです。
そして、これはまた別のカテゴリになりますが、アンチウィルス、アンチスパムメール等の機能と共にファイアウォール機能も含んだUTMの市場も拡大傾向にあり、特に中堅中小企業への導入が進んでいます。
-Bizma!読者へのメッセージ 最後に、セキュリティアプライアンスサーバの導入を考える中堅中小のユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。
この分野では比較的外資系ベンダが多く、ローカライズがどれだけされているかということが問題となります。海外での導入方法をそのまま押し付けている製品もありますので、それが日本の商慣習に合ったものであるか、確かめてから導入するのがよいと思います。
それから、実際に調査を行っていると、自社にどのようなセキュリティ機能が必要であるかをあまり考えずに導入し、あとで使い勝手が悪くて困るというケースが多く見受けられます。中堅中小企業では情報システム部門に人や管理コストを投じることが難しいということもありますので、必要な機能やスペック、ユーザビリティなどを、あらかじめ精査した上で導入を考えるのが得策です。
また、セキュリティ分野の製品は、1日24時間働いていなければならないものですから、サポート面が1つの大きなポイントとなります。サポートセンターが日本にないベンダもあり、またあったとしても、求めている回答が返ってくるまでに時間がかかったり、対応が日本企業に合ったものになっていない場合があります。セキュリティベンダのパートナーの連携体制がどうであるか、何かあったときにどれだけ瞬時に対応してくれるか、などというサポートの充実度も、製品選定の1つの基準となるでしょう。
取材協力:ミック経済研究所
特集「隣の企業が良いアイデアを持っているのは何故か!?」
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