2008年9月9日
企業情報ポータル(Enterprise Information Portal)の市場では、これまでは特に多数のアプリケーションを保有する大企業での導入が中心であったが、既存グループウェアからの移行や、次のステップとしての導入が本格化し、中堅中小企業でも注目されている。 また、最近ではEIPの持つ意味は、単なる「データ集積」から「データ管理」へとシフトしているという。今回はノークリサーチの岩上氏に、EIPの変遷、市場動向、そして製品の選び方や活用法についてうかがった。
- 企業情報ポータル(EIP)とはどのようなものでしょうか?その意味や成り立ちについて教えてください。
EIPとは、複数のアプリケーションから得られたデータを統合して、業務の効率化を図るツールのことをいいます。ただし、ポータルというからには、単に複数のアプリケーションのデータを一緒に表示するだけではなく、データを組み合わせることで何かしらの効率化が図られている必要があります。
例えば、「取引先データ」と「株価情報」があったとき、これらがただ並べて表示されていてもEIPとはいいませんが、企業名をクリックすると株価情報が表れるなど、データを連携させる機能が備わっていることでEIPといえるようになります。「緯度経路の情報」と「不動産の情報」を合わせて、地図上に物件の情報を出すGoogleマップの機能を活用した事例などを思い浮かべるとよいでしょう。コンシューマ向けのポータルサイトではかなり進んでいる機能です。
EIPの成り立ちにつきましては、いくつかの流れがあります。まず、「グループウェア」からの派生が挙げられます。グループウェアには元々スケジューラや文書管理など、複数のアプリケーションが存在していましたから、そこに外部アプリケーションからの最新情報を取り入れたいというニーズは自然にでてきます。そのような流れからEIPへ進化していったのが、1つ目の派生です。
次に「文章管理ツール」からの流れがあります。特にSMBなどでは、ファイルサーバへ無造作に文書ファイルを放り込んでいった結果、どこに何のファイルがあるかわからなくなってしまうということがあります。それをできればWebで検索したいというニーズから生まれたのが文書管理ツールであるわけですが、このような文書管理ツールの流れから現れたEIPが2つ目の派生です。
また、SOAの観点からアプリケーション統合を考える「Webアプリケーションサーバ」からシフトしていったEIPの流れがあります。これは、どちらかといえば大企業向けですが、より深いレベルでSOA的に複数のアプリケーション同士が結びついている様子を画面でみることができる大規模なシステムになります。
そして、2000年前後から表れたのが「スタートページ」です。iGoogleのように、ドラッグ&ドロップで操作してページを見られるような、複数の情報を1つの画面に表示させ、手軽に利用できる情報ポータルです。コンパクトにEIPを実現させたいときなど、今後注目されるEIPの流れだと思われます。
- 主要なEIP製品について教えてください?
先ほどお話ししました、グループウェアから派生したEIPとしては、以前からある製品ではドリーム・アーツの『INSUITE®Enterprize』、2000年以降ではサイボウズの『サイボウズガルーン2』があります。中堅中小企業向けでは大塚商会の『Easy Portal』などが代表例です。
文書管理ツールより派生したものでは、初期からあるものではオーシャンブリッジの『Net-It Central』や、ナレッジマネジメントや検索の色彩の濃いものではリアルコムの『KnowledgeMarket』、ジャストシステムの『ConceptBase』が挙げられます。最近では、大塚商会の『VisualFinder』があります。そして、このグループウェアからの派生と、文書管理ツールからの派生の中間に位置するのが、Microsoftの『Share Point Server』になります。
Webアプリケーションサーバからの流れとしては、IBMの『Web Sphere Portal』、サン・マイクロシステムズの『Sun Java CAPS』が知られています。そして、スタートページのコンセプトによる製品は、ビーコンITの『InfoScoop』があります。
- EIPの市場動向について教えてください。
中堅中小企業向けEIP製品の平均単価から市場規模を推測すると、2008年の市場規模は約65億円と考えられます。EIPには面白い傾向がありまして、2007年と2008年の調査結果を比較してみますと、導入意向は減っているのですが、導入実績は増えているのです。
EIPに対して、自分たちにはあまり関係ないと考えている企業が多いのですが、そのような中で、必要だと考える企業に対しては着実に導入されていることを表しています。恐らく、現状では中堅のミドルクラス(年商100~300億)以上のところでの関心が高いと思われます。
しかし、実際は、最初からEIPが必要だと理解できている企業は少なく、ある程度の数のアプリケーションを導入している企業がベンダに相談し、EIPを導入するに至るという傾向が強いと考えられます。EIPであることを意識せずに利用しているケースも多いです。
- EIPを活用するべき場面や、トレンドについて教えてください。
例えば、「自社製品の新たなキャンペーンを実施するにあたり、ヘルプデスクに寄せられた意見とインターネット上のブログでの評価を同時に検索して、共通する自社製品の評価ポイントを見つけ出してグラフ化したい」と考えるときなど、Webサービスの形で公開されている複数のデータを結合して、新たな情報として活用したい場合などはEIPを活用する有効な場面といえます。
ここで、これに加えて特に重要だと考えているのは図の下の部分です。コンシューマ向けではなく、エンタープライズのポータルの場合には、やはり検索機能が十分にカバーされていなければなりません。また昨今では、検索ができるだけではなく、アクセス制御が非常に重要になってきています。当然、重要な情報を誰もが見られるという状況では困りますから、検索のためのインデックスが作れるだけではなく、社内の権限情報などもあわせてフィルタリングされなければいけないということになります。要するに、この検索結果の情報を、このユーザが見ても良いか悪いかという制御がなされなくてはならないということです。これが非常に重要なところです。
これから先の内部統制なども考慮に入れると、単に2つのデータを連携させて、新しい画面を作れるだけではなく、その結果を出力する際になんらかの「検索」ができ、なおかつ検索された結果は、権限による「アクセス制御」を反映したものであるというのが、今後のEIPの重要な意義になってくるであろうと考えています。そして、これから内部統制や情報セキュリティの強化を考える中堅中小企業においては、有効なソリューションになり得ると思われます。
- 最後に、EIPソリューションの導入を考える中堅中小のユーザ企業へ、メッセージをお願いいたします。
やはり、やみくもにEIPを導入してもなかなか成功しないでしょう。そこで、企業規模別、あるいは用途別に有効なアプローチ方法を考えてみます。
中堅のハイレンジ(年商300~500億)の企業で、複数回利用されるデータソースが多くある場合など、例えば、顧客データをCRM、SFAなど様々な用途で使用し、同時に社員マスタ、取引先データも用い、その間に何通りも組み合わせがあるといった状況においては、ある程度コストをかける必要があります。まず各データをWebサービスで公開し、外と連携するための口を作り、SOA的なアプローチでそれぞれを組み合わせていくのがよいと思います。このようなSOA型のアプローチを行う代表的な製品として、サン・マイクロシステムズの『Sun Java CAPS』、日本オラクルの『Oracle WebLogic Portal』などがあります。
また、中堅のミドルレンジ(年商100~300億)の企業などで、そこまでの規模は必要ないが、社外のWebサービスとの連携が非常に多いというとき、例えば、営業マン向けに取引先の株価情報を見せたり、最新プレスリリースを出がけに確認できるシステム作ったりというような場合では、連携相手がWebサービスになっていますから、自社のシステムもWebサービスにしてつなぐのがよいでしょう。これをなるべくコンパクトに実現するためには、ビーコンITの『InfoScoop』などといったスタートページ製品が候補として考えられます。
次に、中堅のローレンジ(年商50~100億)の企業向けに、社内だけで特定のデータソース間を結合したいというような場合には、サイボウズの『サイボウズガルーン2』や、マイクロソフトの『Share Point Server』などの、製品をカスタマイズし、情報を表示させるガジェットなどを組み込んで、情報を結合させるのも1つの方法だと思います。
しかし、以上のアプローチでは、さきほどお話ししたアクセス制御のためのフィルタリングの機能はカバーされていません。アクセス制御されたコンテンツ提供を実現させるためには、エンタープライズサーチによる戦略が有効です。代表的な製品としては、リアルコムの『KnowledgeMarket』、ジャストシステムの『ConceptBase』などがあります。現状では少しコストがかかりますが、今後はこのような形のソリューションが必要になってくると思います。
検索機能まで網羅した手軽なEIP構築パッケージが今後登場してくるかどうか?が中堅中小企業におけるEIP普及のカギを握っているといえるでしょう。
取材協力:ノークリサーチ
特集「隣の企業が良いアイデアを持っているのは何故か!?」
| 第1回 | 企業ノウハウを最大限引き出すEIP |
| 第2回 | 今、注目のEIPソリューション |
[隣の企業が良いアイデアを持っているのは何故か!?関連ページ]
- EIP
- EasyPortal (株式会社OSK)
- INSUITER®Enterprise (株式会社ドリーム・アーツ)
- KnowledgeMarket (リアルコム株式会社)
- サイボウズ ガルーン2 (サイボウズ株式会社)
- OrekaTR(01/05 15:35)
- ダイヤモンドポータル(12/25 12:30)
- PrintStream® Core SE(12/10 15:17)









