2008年7月29日
帳票データのWeb化の需要や、コンプライアンスの意識の高まりを受けて、飽和市場と言われる帳票ソリューション市場も、緩やかではあるが確実な成長を続けている。中堅中小企業にもコンプライアンスが求められる今日、帳票システム導入ニーズの裾野が広がりつつある。
前回は、帳票ソフトに関する基本的な概念について紹介した。第2回は、株式会社ミック経済研究所の樋口一則氏に、帳票ソリューションの市場動向とトレンド、そして各ベンダの戦略ついて伺った。
- 帳票ソリューションの種類について教えてください。
企業活動のあらゆる場面で係ってくる帳票。一般的な業務プロセスにおいて、例えば、取引先と営業所の間で「見積書」、「注文書」を交わし、それに合わせて営業所は「発注書」を資材部門へ、また資材部門は「製造指図書」を製造部門へ、そして製造部門は出荷時に「出荷表」、「検品書」を発行する。そして納品後、取引先との間で「請求書」、「納品書」を交わす・・・。
このように、帳票は業務フロー全体に常に密接に関連し、その流れの中核をなしていると言っても過言ではないであろう。帳票は企業の活動に欠かせないものであり、そして、帳票システムをいかに有効活用するかが、企業活動全体の活性化、効率化、そして信頼性向上のための大きな鍵となってくる。
私共では、帳票パッケージを「電子帳票パッケージ」、「帳票設計パッケージ」、「帳票運用パッケージ」の3つに分類しています。
「電子帳票パッケージ」は、帳票データをPCなどで閲覧できるように自動的に変換を行う“電子帳票化”の機能をメインとした帳票パッケージで、多くの場合、配信・印刷・管理の基本機能も含んでいます。「帳票設計パッケージ」は帳票の設計に特化した帳票パッケージで、より複雑な帳票設計が可能になり、様々なカスタマイズを行うことができます。「帳票運用パッケージ」は、配信、印刷、集中管理、そしてセキュリティ機能などについて高い機能を備える、帳票の運用機能に特化した帳票パッケージです。
どの種類の帳票パッケージであっても、帳票に関する基本機能は大体そろえているのですが、その中でも、電子帳票化にウェイトを置いているのか、それとも、一から帳票設計を行うことにウェイトを置いて管理機能などもオリジナルで設定するようなソリューションに応えられるものであるのか、あるいは、運用・管理・印刷の面にウェイトを置いて総合的に機能を付加したものであるのかという観点から大きく3つに分類しています。
電子帳票パッケージは、帳票パッケージの簡易版と捉えることもでき、中堅中小企業にとっては比較的導入しやすいソリューションだと言えます。ERPや会計パッケージなどと連携して、自動的に帳票データを変換する機能があると同時に、紙ベース帳票をスキャニングによって電子化させる機能を持つものもあります。電子帳票パッケージだけでも、ある程度の管理機能はついていますが、中堅~大手企業、あるいは特に運用を強化する必要がある企業では、分散出力と統合管理、そしてアクセス管理、ログ管理までを兼ね備えた専門の帳票運用パッケージを導入する必要があるでしょう。さらに、自社のオリジナルの帳票類を設計して管理する必要がある企業では、帳票設計パッケージを導入するということになります。
- 帳票ソリューション全体の市場動向について
帳票ソリューション全体の市場は、2006年から2007年にかけて、7~10%弱の伸び率を示しています。帳票の市場が、飽和市場と言われながらも1桁台の後半くらいの伸び率を維持している要因としては、まずレガシーシステムからオープンシステムへの移行ニーズがあります。また同時に、Web化することによって、各事業所、支店、支社などにある程度のアクセス権限を与えながら、皆で均質な情報を提供できるようにしたいというニーズも、大きな要因として挙げられるでしょう。
- コンプライアンスは、需要の伸びに影響していますか?
背景的にはひとつの要因になっていると思います。セキュリティや監査証跡、あるいはログ管理などは、大手企業では最優先で取り組んでいるわけですが、中堅中小企業では自ら先駆けてコンプライアンスを意識するというよりは、やはり、グループ会社や親会社から内部統制に関する管理の状況を問われたり、あるいは取引先から問い合わせを受けたりすることが、中堅中小企業のコンプライアンスへの関心を高めることにつながっていると思われます。そういう意味では、基幹業務パッケージの市場とリンクしているわけですが、現在は帳票関連のニーズが先行して伸びてきており、ようやく基幹システムそのものを見直す段階に入り始めたということでしょう。
飽和感の強い市場ですが、それがプラスに転じてきていることは事実だと思われます。特に、改ざん防止機能には関心が高まっていますし、ログやアクセスの管理なども、さらに求められてくる要素であることは間違いないでしょう。今後さらに、中堅中小企業での需要が高まると予想されますが、しかし急激な伸びを示すというよりも、現在のようにじわじわと伸びていくと考えられます。
- SaaS型の帳票システムは、今後シェアを伸ばしますか?
特に中堅中小企業ですと、ソフトウェアの管理が必要ないSaaS型のソリューションは、パッケージよりも好まれると思います。しかし、現在、帳票分野においてSaaS型ソリューションを提供しているのは、ウイングアークテクノロジーズと日本オプロくらいで、まだ帳票ソリューション全体に占めるSaaS型ソリューションの割合が非常に小さい状態ですから、今後伸びていくとは思われますが、どの程度までということは、まだ予断を許さないでしょう。
帳票におけるSaaS型ソリューションが、これから伸びると考えられる理由としては、自社の貴重な企業情報/データベースを預けることなく、あくまでもパッケージベンダから帳票のフォーマットを中心とするシステムだけを借りればよいということです。データそのものは自社で管理できますから、その意味では、ユーザ企業側からは敷居が低く、採用しやすいということが言えると思います。
将来的には、パッケージベンダがデータセンター企業とアライアンスを含んで、ユーザ本社の基幹システムも預かって大規模にサービス展開を行うことも考えられますが、それはSaaSの事業規模がもっと拡大してからのことです。実績は確実に伸びていますが、市場全体を大きく動かすほどに成長するかどうかは、まだ判断が難しいところです。
- 帳票パッケージの技術トレンドについて教えてください。
先進的に新しい機能というものはありませんが、例えば、昨今では、基幹パッケージとBIツールの活用が見直されています。膨大なデータを基幹パッケージに取り込み、様々なレポートとして取り出すことができますが、しかしそこから何を活用し、どう分析し、どう判断するかというところまでの使われ方は、まだまだ日本では遅れているといえます。今後は、帳票ソリューションとBIツールの連携という方向性が、ひとつ注目されると思います。
そして、内部統制に関連して、今ではセキュリティやログ管理、監査証跡などの機能は必須となってきています。いつ誰がどこで閲覧したか、印刷したか、の記録を残して、それをすぐに調べられるといった機能は、当然備えるべき機能となりつつあります。また、全国の事業所でWeb端末やPCで帳票データを見ることができたり、どこでも出力ができるという機能は、より使い勝手が良くなるように工夫されています。新しい技術というよりも、このような既存機能の強化や、既存システムとの連携といったことが、しばらくのトレンドになると思います。
- 帳票ソリューションの代表的なベンダの特徴や戦略について教えてください。
電子帳票パッケージの分野ですと、富士通、JFEシステムズ、インテックが広いシェアを占めています。
富士通はどの帳票パッケージ市場でも広いシェアを占めています。電子帳票の分野では、情報漏えい対策などのセキュリティ機能を特徴とする「Interstage List Works」を提供し、公共・製造分野を中心として導入が進んでいます。全国のパートナーや企業グループの存在が強みといえます。
JFEシステムズは、Linux対応の帳票システムを他社に先駆けて提供し、順調な成長率を示しています。電子帳票パッケージの市場で高いシェアを維持し、「FiBridgeⅡ」は銀行向けに多くの導入実績を持っています。
インテックは、最高水準の高速検索機能を強みとする帳票ソリューションを提供し、電子帳票パッケージ市場において上位のシェアを占めています。自社の強みを活かした様々なソリューションを展開し、各種基幹業務システム(住商情報システム、エス・エス・ジェイなど)、セキュリティ関連製品(クオリティ、エムオーテックスなど)との連携も図ることができます。
帳票設計パッケージの分野ですと、富士通、ウイングアークテクノロジーズ、中央コンピュータが広いシェアを占めています。
富士通は、帳票設計の分野では、様々なプラットフォームやアプリケーションにおいて共通の文字運用環境を提供するツール「Interstage Charset Manager」が強みであり、公共・金融分野を中心に販売を伸ばしています。
ウイングアークテクノロジーズは、その専門性を活かして帳票ソリューションの市場を牽引しています。帳票設計においては、「フォームアプリケーション」という考え方により、上位のアプリケーションに依存しない帳票処理を実現する設計ツール「SVFX-Designer」を提供し、着実に売上げを伸ばしています。
中央コンピュータシステムは、「System 5000」などの帳票設計ツールを古くから展開しており、売上拡大を図っています。
帳票運用パッケージの分野ですと、ウイングアークテクノロジーズ、富士通、日本オプロ、ビーエスピー・プリズムが広いシェアを占めています。
ウイングアークテクノロジーズは、特に帳票運用の分野において大きなシェアを堅持しています。サービス指向アーキテクチャ(SOA)をコンセプトとした帳票ソリューションを展開し、多くの基幹業務システムとの連携を図っています。また、同社のBIツール「Dr.Sum」との連携や、SaaS型帳票ソリューション「帳票匠屋」を提供し、今後も高い成長が予想されます。
富士通は、多くのメインフレームユーザを抱えていることが大きな強みであり、オープンシステムへの切り替えや、システムの追加・バージョンアップの際に、帳票ソリューションを絡めた提案を行えるということもあり、大手を中心にシェアを拡大しています。帳票運用では、ホストのマイグレーションに対応し、柔軟性の高い運用をサポートする帳票配信管理ソフトウェア「List Manager」が、堅実に実績を積んでいます。
日本オプロは、帳票運用の市場で上位のシェアを占めています。昨年よりSaaS型の帳票サービス「OPROARTS」の提供を始めました。帳票設計の市場でも大きな成長率を示し、今後も好調なシェア拡大が見込まれます。
プリズムより帳票関連事業の事業譲渡を受けたビーエスピー・プリズム(ビーエスピーグループ)は、特に帳票運用の市場において、今後大きな伸びを示すと予測されます。
- 最後に、帳票ソリューションの導入を考える中堅中小企業の担当者様へメッセージをお願いいたします。
まずは、各企業の業態、規模に合った製品を選ぶということが重要です。そして次に、帳票の電子化によって、「何を目指すか」という目的を明確にする必要があります。新しく帳票ソリューションを導入しても、メリットがはっきりしないということでは困りますから、例えば、コスト削減のためか、ペーパレス化のためか、データ管理運用の効率化のためか、それともセキュリティ強化のためであるのか、という目的をはっきりとさせることが重要です。いくつかの観点から目的を明確化させながら、業容、業態に合った製品を背伸びせずに選んでいくのがよいかと思います。
取材協力:株式会社ミック経済研究所
帳票ソリューションでここまでできる!
| 第1回 | ペーパーレス化だけがメリットではない |
| 第2回 | 3種類の帳票パッケージを目的で使い分け |
| 第3回 | ソリューション最前線 ~JFEシステムズ~ |
| 第4回 | ソリューション最前線 ~ウイングアーク テクノロジーズ~ |
[中堅企業でいま”導入すべき”帳票関連ページ]
- 帳票
- biz-Stream (ブレインセラーズ・ドットコム株式会社)
- OPRO X Server (日本オプロ株式会社)
- Report Viewer 2 (キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
- Trinitat (株式会社中央コンピュータシステム)
- シーオーリポーツ Suite (株式会社 エイチ・オー・エス)
- OrekaTR(01/05 15:35)
- ダイヤモンドポータル(12/25 12:30)
- PrintStream® Core SE(12/10 15:17)









