2008年2月1日
BIの技術動向・トレンドに迫るBI特集第3回。「リアルタイムBI」と「CPM」、今後のBI技術トレンドを語るうえでの最重要キーワードを含め、野村総合研究所 主任研究員の城田真琴氏に話を伺った。
- まず、BI製品はどのように利用されているのでしょうか。
これは以前から変わらないのですが、BIの機能として多く用いられるのは、レポーティング機能とOLAP※1の機能です。具体的な用途としては、販売管理と予算管理が主なものになるでしょう。ひとつは顧客に対する用途であり、もうひとつは社内での用途ということになります。
※1:OLAP
オンライン分析処理。データベースを多次元的に分析、視覚化する。
-現在、BI製品に求められていることは何ですか。
BIに求められる事というのは、結局ユーザが今抱えている課題を解決するためにはどうしたら良いのか、ということを考えるときに出てくるお話ですから、BI利用に関する課題について考えてみるのがよいでしょう。
まずひとつに、BIで分析を行うためのデータというのは、多くの場合ERPやCRMなどのアプリケーションから持ってくるわけですが、そのようなトランザクションデータをDWH※2へ格納するのに時間がかかり過ぎてしまうことが課題として挙げられます。例えば1ケ月間データを溜めて、それからBIによって分析を行うということでは判断が遅れ、徐々に時代に合わなくなってきています。
※2:DWH
データウェアハウス。大量のデータの中から、関連性を含んだ分析を行うシステム。
次に、タイムリー性が追求されることで、BIによる過去分析はできても"現場で今何が起きているか"がわからない、ということが課題として考えられるようになりました。つまり、リアルタイムの意思決定ができないということです。
そして、もうひとつ課題として挙げられるのが、情報を各部門だけではなく企業全体の業績管理として活用するという方向性です。BIを部門レベルだけではなく、企業経営のレベルで展開していきたいということです。
以上のようなことが、今後の課題として考えられており、これからの技術動向につながっていくことになります。
-それらの課題はどうすれば解消できるのでしょうか。
まず、"トランザクションデータを格納するのに時間がかかる"という課題に対しては、ひとつに、DWHのアプライアンス製品が出始めています。このアプライアンス製品は、ハードウェアとソフトウェアが一緒になったもので、導入や管理が非常に容易です。パフォーマンスも良く、価格もこれまでのDWHと比較して低めであるということで、最近市場に出てくるようになりました。
我々も社内で検証を行ってみましたが、かなり短期間での導入が可能で、実際にパフォーマンスも良いという結果が出ています。導入・管理コストを抑えたいと考えるSMB(中堅中小企業)などに適した製品であると思います。製品が出て間もないということで、実績としてはまだまだですが、価格とパフォーマンス、導入・管理の容易さという点では、かなり優位性があるのではないでしょうか。主要なベンダとしては、Netezza、DATAllegro、Calpontなどといったベンチャー企業が中心で、大手ベンダ製品に対抗する形でリリースされています。
次に"現場で今何が起こっているかわからない"という問題を解決するために、「リアルタイムBI」に注目が集まっています。「リアルタイム」がBIにおけるひとつのキーワードになりつつあります。これは、過去のデータについて時間をかけて分析するのではなく、日々の業務において、現場でビジネスを行っている人の意思決定のために使えるBIを目指したものです。

リアルタイムBIは、「オペレーショナルBI」と呼ばれることもあります。例えば、どこかの店舗で在庫切れがある、あるいは商品の納期が遅れている、などといったビジネスイベントが発生したとき、それをすぐさま検出し、分析を行って対処するというようなリアルタイムの意思決定に役立ちます。また、この派生として、SOX法対応への利用、あるいはCRMを高度化してリアルタイムで用いる、などの流れもあります。
リアルタイムBI製品についても、Celequest、ThinkAnalyticsなどのベンチャー企業が主要ベンダとなっています。SAP、オラクルなどの大手ベンダも同等の機能を持った製品を発表していますが、テクノロジー的にはベンチャー系の企業の方が進んでいると言えます。注目されているベンチャー企業のソリューション例として、トランザクションデータをリアルタイムで監視し、過去のデータと比べて例外的なビジネスイベントが発生した場合に通知することで、問題の発生を事前に予測するというものなどがあります。
そして、BIの課題の最後でお話しした、"情報をそれぞれの部門だけではなく企業全体の業績管理として活用する"という方向性は、現在ベンダが力を入れているもので、CPM(Corporate Performance Management)と呼ばれています。ベンダや調査会社によっては、EPM、BPMなどと呼ぶ場合もあります。特に、大企業向け製品を中心に扱っているコグノスやビジネスオブジェクツ、ハイペリオン、オラクルなどでは、CPMにかなり力を入れているようです。マイクロソフトも昨年の11月頃に、CPMを実現する製品を発表しました。
CPMというのは、企業がビジネス・パフォーマンスを監視・管理するために使用するプロセスや方法論、評価基準、システムなどを指す包括的な概念で、非常に幅広い分野を含んでいます。BIのレポートやDWHなどから、組織や文化といったコンセプト的なものまで入ります。その要素のひとつとして、経営ダッシュボードと呼ばれるものがあります。これはビジュアル的にわかりやすいため、CPMがこの経営ダッシュボードであると誤解する人も多いのですが、飽くまでもCPMの構成要素のひとつです。

以上のようにBIの技術動向としては、大きく3つの方向性があります。BIの起源をたどると、EIS※3、MIS※4などと呼ばれていた時代があり、90年代になってDWHが現れ、そして2000年位からBIという言葉が出てきました。ひとつ目の方向性は、このDWHを、より高いパフォーマンスで安価に実現する「DWHアプライアンス」。2つ目の方向性は、日々の業務における迅速な意思決定に使えるBIを目指した「リアルタイムBI」。そして3つ目は、BIによって部門の最適化だけではなく、全社規模で業績の最適化を図る「CPM」です。今後のBIの展開を考える上で、この3つの方向性に注目しています。
※3:EIS
Exective Information System。経営情報システムの事で、経営者の意思決定を支援する情報システム。
※4:MIS
Management Information System。EISと同様に経営情報システムを差す。どちらも1970年代に登場し、マシンスペック不足で受け入れられることはなかった。








